顎関節症

投稿日:2017年1月8日

カテゴリ:顎関節症

90年の前半頃からだんだんと顎関節症に関していろいろ報告されるようになり、私が当時所属していた東京医科歯科大学の口腔外科でも、顎関節症をⅠ~Ⅳ型に分類して、それぞれについて治療法を策定する仕事に携わったことがあるが、この頃はほぼ関節円盤に主眼をおいて治療法を考えていた。

関節円盤が前方、後方、側方にだんだん、または突然変位することによってクリック音が出て、痛みが出たり出なかったり、また口が開かなくなったりといった症状を分類別に分けて段階的にいろいろな手段を用いて治療に介入していた。

その代表的な治療法はマウスピースであり、例えばマウスピースの厚みが3ミリあるとすると、かみ合わせが全体的に3ミリ分厚くなるために顎関節も3ミリ分下方に押し広げられ、そのできたスペースに関節円盤が復位するといった理論である。

確かにこれで症状が劇的に改善する症例もあるが、そうならない症例も沢山ある。

そもそも受け口の人とその逆の下あごが小さい人ではかみ合わせが全く違う。上記のように3ミリのマウスピースを装着した場合すんなり奥歯から前歯までマウスピースに当たる人と奥歯しか当たらず前歯が全く当たってこない人がいる。これはどう考えれば良いかとの疑問が出てくる。やればやるほど訳の分からない患者が出てくる。

思考回路が外科な考えの先生たちは、最終的には開かなくなった口は関節円盤を切って取れば口は開くので切る治療も数多く行われてきた。

しかし、なんと切らなければ開かない筈の口がそのままほっとくと、自然と開くことがかなりの頻度である事が報告される。

これはそのまま口が開かずに摂食できなければ死を意味するため、生体が自然と口が開くように適応したとする説が出てくる。

思考回路が補綴中心の先生方は、全ての原因はかみ合わせの悪さに繋げるので、削って被せることで治療を進める、どうしても無理な症例には矯正で対応することになる。

もともと矯正の思考回路の先生方は、かみ合わせを良くするために歯列矯正をするので、最も非のない治療をしていると勘違いしている先生を良く見かける。このようなタイプの先生はそもそも理想咬合についての見識が殆んど無い先生が多く、その証拠になんのためらいも無く、4番目の歯を抜いてただ歯を並べる。

並んでさえいれば、綺麗に見えるから良いかみ合わせだと思い続ける。しかし数年後に折角綺麗に並べた歯列がまた乱れ始めたり、顎関節症が発症してもなぜそうなったかを考えていないので、説明はおろか原因は全て患者と決めつけてくる。

多くの、所謂矯正医は卒後虫歯も、歯周病も、かみ合わせも、外科も、補綴も、薬理も、全く勉強しない先生がなんと多いことか。

これは本当に歯科が抱える深い問題だと思う、もっと広い考えをもつべきであると思う。

そもそも、生まれてから成長発育の過程で様々な部位、例えば顔面、口腔、頭部、頸部が発育していくが、それぞれが順調に正常に発育すれば多くの問題は解消される。

それがうまくいっていない、例えば上顎が正常に前方に発育できていなく後頭骨が頸椎方向に左右のバランスが悪くどちらかに歪んで発育したらどうなるだろうか?普通に考えて側頭骨は左右差が出るために顎関節の形そのものが、左右で違ってくる。下顎は上顎にぶら下がっているので、顎関節の左右差が有れば自ずと顎の動きは左右差が出て当たり前なのです。

先に書いたように、視点が狭いと問題の出ている関節円盤にフォーカスしすぎているために、全て関節円盤ありきで治療を進めようとする。問題が解決する筈はないのは明確で症状再発は当たり前なのです。だからいつまで経っても対症療法、いくら論文を出してもCランクとなってしまい、全く評価されない状況。

先日ある矯正医が姿勢のトレーニングといって患者に語っていた、内容はおしり歩きで膝を両手で抱えておしりでえっちらほっちら歩くことで背筋が伸びるというもの。そもそもその姿勢でおしりで歩くための条件は、背筋を伸ばさない限り達成できないのだから当たり前だが、そんなことで姿勢が綺麗になった人に会ったことも無ければ、論文も無い。ましてそんなことを続けていれば、尾てい骨にとんでもない負荷がかかり尾てい骨骨折を起こしかねない、ナンセンスもいいところですね。

姿勢が悪く首が前に出ていると自分の頭の重さが重力に引っ張られているので、首の後ろや肩や背中の筋肉は常に緊張状態にあるので、疲れやすくなり筋肉は硬くなるのです。成人の頭の重さは、約7~8キロあり、体の中心から15センチ前に出るだけで3倍の21~24キロの力で重力に引かれているのです。

もちろん姿勢を正せば体が楽になるのだから、だれでもそうしたいのですが、できない理由があるからできないのです。

人は姿勢が悪いからと言って5~10分位では絶対に死なない、しかし呼吸が止まったら5分程度で死んでしまう、つまり姿勢よりも呼吸のほうが人にとっては優先順位が高いのです。

ということは、鼻や喉が理想に近ければ近いほど呼吸が楽な訳なので、姿勢が良いのでは?との仮説が立つ訳です。実際そのように上顎をより理想に近い形と位置に導いてあげると、意識しなくても勝手に姿勢が良くなるのです。おしり歩きなんかさせてないのです。

上位概念という考え方が有って、外反母趾はその上の足首が悪い、足首が悪い人はその上の膝が悪い、腰が悪い人はその上の頸椎が悪いのです。この理論を突き詰めると最上位は脳頭蓋底となります。つまり脳頭蓋底の歪みは蝶形骨の歪みでありそこが歪んでいると言う事は、後頭骨も側頭骨も歪んでいる事になるのです。これが顎関節症のそもそもの原因と考えると殆んどの説明がつくのです。

人は老化と重力に抵抗して生きているのです。考えは常に広くいろいろな角度から見つめ、真実を追い求める執念が人を進化させると思っております。

 

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